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【シリーズ第5回】妊娠中の腰痛・骨盤痛

薬が使えない時の「安全な選択肢」としての鍼灸

妊婦さんの6〜7割に発症する腰痛・骨盤痛

妊婦さんの60〜70%が「腰痛」を経験

産科領域の報告では、妊婦さんの6〜7割が腰痛を訴えると言われています。多くは妊娠による生理的な変化の範囲に収まりますが、中には、

  • 強い痛みで日常生活が制限される
  • 産後も痛みが続き、育児に支障が出る

というケースもあります。

さらに注意が必要なのは、
腰痛の中には子宮収縮や腎・尿路系の病気が隠れている場合があるということ。
「妊娠中だから仕方ない」と我慢せず、まずは医療機関で原因を確認することが大切です。

西洋医学でわかる「妊娠中の腰痛が起こる理由」

妊娠中は、以下のような変化が一気に起こります。

  • お腹が大きくなり、腰椎の反りが増える(反り腰)
  • 体重増加による負担
  • 筋力低下、ストレス、姿勢変化

そのため、腰痛や骨盤痛が起こりやすくなるのです。

妊娠中の治療は「まず安全が最優先」

西洋医学的には、原因に応じて以下の治療が選択されます。

原因疾患がある場合:その治療が優先

腎盂腎炎、尿管結石、子宮収縮などが原因なら、適切な産科・内科治療が必要です。

手術が必要なケース

進行する神経症状や重い感染症など、ごくまれな状況で手術が検討されます。

手術が不要な腰痛:保存療法

  • 安静・コルセット・骨盤ベルト
  • 温熱療法・牽引療法・理学療法
  • 運動療法(腹筋・腰背筋の強化、ストレッチ、マタニティスイミング)
  • 生活指導(姿勢・体重管理・睡眠姿勢など)

妊婦さんは薬が使いづらいため、こうした非薬物療法の重要性がとても高いのが特徴です。

コクランレビュー:妊娠中の腰痛・骨盤痛に「運動」と「鍼灸」が有望

2015年のコクランレビュー(Liddleら)では次のように報告されています。

  • 運動(陸上・水中)は腰痛を軽減する可能性がある(エビデンスはやや弱い)
  • 鍼は骨盤痛の改善に役立つ可能性を示す試験がある
  • 徒手療法、教育を含む複合ケアにも改善の可能性
  • ただし研究の質にはばらつきがあり、慎重な解釈が必要

つまり、現時点では「万能ではないが、安心して使える非薬物的アプローチ」と考えられています。

コクランレビューは、厚労省が運営している「統合医療情報発信サイト」で読むことができるので、参考にしてみてください。

日本の臨床で蓄積されている「細い鍼」と「お灸」の知見

日本の鍼灸臨床では、海外の研究では「偽鍼」として扱われるほど刺激の少ない細い鍼や、お灸を用いた治療が一般的に行われています。
【シリーズ第2回】妊婦さんに鍼灸ってほんとうに安全?でご紹介したように、海外の研究においても、鍼治療が妊婦さんに重篤な有害事象を引き起こしたという報告は確認されていません。一方で、刺鍼時の痛みや軽度の内出血といった軽微な副作用が報告されていることも事実です。

そこで私たちは、腰痛を訴えて当院を受診した妊婦さんの中から骨盤ベルトを装着しても腰の痛みが改善しない妊娠中の女性(12例)を抽出し、鍼灸治療の効果を100mmのVisual Analogue Scale(VAS)を使用して測定したところ、痛みの程度が治療開始前の44.44mmから、1か月後には25.33mmと減少しました。標準的な治療に鍼灸治療を加えることにより、妊娠に伴う腰の痛みが軽減するこが示唆されました。

VAS値の変化

症例集積研究のためエビデンスとしては限定的ではあるものの、妊娠中の腰痛・骨盤痛に対する安全で現実的な選択肢として、鍼灸の有効性が期待できる結果と考えています。小井土善彦.腰痛―産科領域のマイナートラブルと鍼灸治療.現代鍼灸学 2013;13(1):67–73より

東洋医学から見る「妊娠中の腰痛」

東洋医学では妊娠により 、栄養だけでなく腎気(生命力・回復力)が消耗される と考えます。
そのため、

  • 下肢の冷え
  • 筋肉のアンバランス
  • 気血の巡りの停滞

が起こり、腰〜骨盤周囲にかかる負担が多くなります。それでも自己治癒力が十分に満たされていれば自分で調整できますが、自己治癒力が低下することで痛みが発生しやすくなると考えます。

鍼灸が目指すこと

  • 下肢中心の施術で低下した「腎気(生命力・回復力)」のサポート
  • 血流改善
  • 筋緊張を緩和
  • 身体のバランスを調整

産後の腰痛・骨盤痛も同じ。骨盤を矯正しなくても、鍼灸で十分に効果が期待できます。

妊娠中におすすめのセルフケア

● 1時間に一度は体勢を変える

長時間同じ姿勢は負担になります。

● 足を組まない(腰や股関節に負担がかかる体の使い方をしない)

寝る姿勢は「横向きで膝を軽く曲げる」

仰向けの場合は膝下にクッションを。

重いものは体の近くで持つ

ぬるめのお風呂で血行改善

無理のない運動(散歩・マタニティヨガ・水中運動)

つらさを我慢しないで。鍼灸は「薬が使えない時期の安全な選択肢」

妊娠中の腰痛は、出産まで続くことも珍しくありません。
でも、適切にケアすれば多くの場合、症状は緩和します。

  • 薬が使いづらい
  • 検査では異常がなかった
  • でも痛くてつらい

そんなときこそ、鍼灸という非薬物療法が力を発揮します

せりえ鍼灸室では、妊婦さん専用の体勢・刺激量で、母体と赤ちゃんの安全を第一に施術しています。お気軽にご相談ください。

次回第6回のテーマは「お腹が張りやすい・眠れない・不安…妊娠中の“よくある不調”と鍼灸のサポート」です。ご期待ください。

せりえ鍼灸室は、東洋医学の知恵と繊細な技術で、妊娠中をはじめ、その他のステージの女性のからだや妊活もサポートしています。

© 2025 Yoshihiko Koido. 本記事の内容の無断転載・引用を禁じます。

院長 小井土善彦

全日本鍼灸学会認定鍼灸師。京都市生まれ。 ●略歴 旧早稲田鍼灸専門学校卒業 明治国際医療大学大学院鍼灸学専攻博士課程前期(修士)終了(鍼灸学修士) 筑波技術大学客員研究員(2014年~2017年) 全日本鍼灸学会認定委員会審査委員(2014年~) 現代医療鍼灸臨床研究会会員(評議員) ●教育 神奈川県立衛生看護専門学校 助産師学科 非常勤講師 (2008年~) 森ノ宮医療大学保健医療学部 鍼灸学科 非常勤講師(2009年~2016年) 東京有明医療大学保健医療学部 鍼灸学科 非常勤講師(2016年~) ●所属学会 全日本鍼灸学会、日本母性衛生学会、日本東洋医学会、日本脳神経外傷学会 ●主な研究テーマ 産婦人科領域における鍼灸治療の研究 軽度外傷性脳損傷および軽度外傷性脳損傷に対する鍼灸治療に関する研究 ●趣味、特技 スキー、音楽鑑賞、読書、写真、旅行、ドライブ、釣り、シュノーケリング、キャンプ、ハイキング、料理、ショッピング、昼寝・・・

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