出産後すぐからできる鍼灸ケア・セルフケア

産後の養生が、なぜこれほど大切なのか
妊娠・出産に伴う急激な生理的変化や身体的変化は、心身にさまざまな影響を及ぼします。
腰痛などのマイナートラブルや、分娩に伴う痛みが産後も続くと、産後のQOL(生活の質)が低下し、育児に支障をきたすこともあります。
しかし多くのお母さんは、
- 出産直後から育児に追われる
- 自分の不調を「仕方ない」と我慢してしまう
- サポートが十分に得られない
といった状況に置かれています。
高齢出産の増加や核家族化もあり、産後こそケアが必要なのに、ケアが届きにくい時代になっています。
西洋医学から見た「産後ケア」の重要性
出産後、女性の身体は
- ホルモンバランスの急激な変化
- 出血や筋骨格系への負担
- 授乳や睡眠不足による疲労
など、回復を必要とする状態にあります。
こうした背景から、政府は2021年より、
医学的・心理的サポートを提供する「産後ケア事業」をスタートさせました。
近年問題となっている産後うつ、自殺、虐待の予防という観点からも、産後ケアの重要性は高まっています。
「妊娠中の腰痛」は産後まで続く可能性がある
スウェーデンで行われた12年間の追跡調査では、
妊娠中に腰や骨盤の痛みを訴えた女性は、そうでない女性に比べて、
- 腰や骨盤の痛みを感じる日数が多い
- 腰や骨盤の痛みで年間15日以上仕事を休む割合が高い
ことが報告されています(Bergström et al. 2017)。
これは、妊娠中の腰痛を「よくあること」として済ませるのではなく、
その後の人生のQOLまで見据えて捉え直す必要があることを示しています。

産後すぐからできる「鍼灸ケア」の役割
そのような状況の中で、非薬物療法である鍼灸治療が果たせる役割は大きいと考えています。
私たちは、産科病院において、
- 妊娠後期に腰痛を訴え
- 分娩時に大きなトラブルのなかった女性
を対象に、
骨盤ベルトのみの群と
骨盤ベルト+鍼治療を併用した群
を比較するランダム化試験を行いました。
その結果、産後の入院期間中に鍼治療を加えた群では、
腰痛の程度に中等度の改善効果が認められ、
産後の痛みのコントロールにおいて安全かつ有用である可能性が示されました。

東洋医学から見た「産後の回復」
東洋医学では、出産は
「原気(元気のもと)」を大きく消耗する出来事
と考えます。

産後は、
- 無理をしない
- 温める
- 休む
- 少しずつ回復を促す
- 周囲の人に助けてもらうのも養生のうち
という「養生」が何より大切な時期です。
鍼灸は、
- 血流を促す
- 自律神経を整える
- 回復力そのものを引き出す
ことを目的としたケアであり、
産後女性の回復を支える選択肢の一つになり得ます。
せりえ鍼灸室が大切にしていること
せりえ鍼灸室では、
- 出産後すぐの身体の状態
- 育児環境やサポート体制
- お母さん自身の気持ち
を丁寧に伺いながら、
無理なく続けられる産後ケアを一緒に考えています。
「産後だから仕方ない」と我慢せず、
つらくなる前に、どうぞご相談ください。
自分で頑張ろうとしがちな、お母さん自身の気持ちは尊重しつつ、周りの人の手を借りてみよう!に、気持ちを少し変えるだけでも肩の力が抜けて楽になりますよ。
この記事の内容について、動画でもわかりやすく解説しています。
初めて鍼灸を受けるか迷っている方にもおすすめです。
文章では伝えきれないポイントもお話ししていますので、ぜひこちらもご覧ください。
次回第11回のテーマは、「“信頼できる鍼灸院”を見分けるポイント
妊婦さんが失敗しないために知っておきたいこと」です。ご期待ください。
せりえ鍼灸室では、医学的な情報と鍼灸のエビデンスを共有しながら、妊婦さん一人ひとりの気持ちと状況に寄り添い、医療と連携したサポートを大切にしています。
© 2025 Yoshihiko Koido. 本記事の内容の無断転載・引用を禁じます。
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