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【シリーズ:刺しません】第3回:はり師が鍼を使う理由

ツボの質感という考え方 ―

「鍼治療は、どこに刺しているのですか?」

初めて鍼灸を受ける方から、とてもよくいただく質問です。
多くの方は、ツボを「地図のように決まった場所」とイメージされています。

しかし実際の臨床では、ツボは単なる“点”ではありません。
生きている人間のツボは、体調や生活状況によって変化する「状態を持った場所」として捉えています。

今回は、はり師がなぜ鍼を使うのか、その根底にある考え方をお伝えします。

◎ ツボは「状態」で変化する

ツボは、体の不調が現れやすい場所です。

例えば、

・押すと痛みを感じる
・少し硬くなっている
・冷たく感じる
・むくんでいる
・逆に熱を持っている
・凹んでいる

このように、健康な状態とは違う“変化”として現れることがあります。

日本で行われている多くの鍼灸臨床では、この変化をとても大切にしています。

つまり、ツボとは「決まった位置にある点」ではなく、体の状態を映し出す“反応点”でもあるのです。

◎ 触れることで見えてくる情報

こうしたツボの状態を確認するために欠かせないのが、「触診」です。

はり師は、手で皮膚や筋肉の状態に触れながら、

・硬さ
・温度
・弾力
・湿り気
・左右差
・凹み
・むくみ
・弱々しさ

などを丁寧に観察します。

この触れる作業は、単なる確認ではありません。
体がどのようなバランスにあるのかを読み取る、大切な診察の一部です。

そして、この触診によって見つけたツボの状態を整えることが、鍼治療の目的になります。はり師にとって、ツボは治療点だけではなく、診断点としても重要な意味があります。

◎ 鍼を使う本当の理由

「鍼は刺すことが目的」と思われがちですが、実際にはそうではありません。

はり師が鍼を使う理由は、
ツボの質感を整えるためです。

変化しているツボに適切な刺激を与えることで、

・硬くなった組織をゆるめる
・過敏になった部分を落ち着かせる
・滞っている流れを整える
・凹んでいた穴を埋める
・力を付ける
・熱を下げる
・冷えをとる
・むくみを和らげる

といった変化を引き出していきます。

◎ 刺す鍼と刺さない鍼は目的が同じ

ここで大切なのは、

刺す鍼と刺さない鍼は、目的が同じ

という点です。

どちらも、

「ツボの状態を整える」

という共通の目標を持っています。

違いは、体質や感覚、症状に合わせて「刺激の方法」を変えているだけです。

・しっかり刺激を入れた方がよい場合
・やさしい刺激の方が反応が良い場合

体は一人ひとり違うため、最適な方法も変わります。

◎ 日本の鍼には「刺激を調整する文化」があります

日本の鍼治療には、古くから「患者さんに合わせて刺激を調整する」という考え方があります。

鍼の太さ
刺激の強さ
施術時間
そして、刺すか刺さないか

反応の程度やスピードは様々です。
同じ症状や疾患でも、人によって異なり、同じ人でもその時によって異なります。
こうした要素を細かく調整することで、体への負担を抑えながら治療を行います。

このように、鍼灸は単に刺激を与える治療ではなく、体の反応を見ながら整えていく医療なのです。

◎ 鍼治療は「対話」のような医療

はり師は、鍼を通して体と対話をしています。

触れたときの感触
刺激に対する反応
施術中の変化

こうした小さなサインを受け取りながら、治療を進めていきます。

そのため、刺さない鍼も、刺す鍼と同じように大切な選択肢の一つです。

◎ 次回予告

次回は、刺さない鍼の具体的な道具についてご紹介します。

・円鍼
・ローラー鍼(車鍼)

など、実際にどのように使われるのかを、写真とともに分かりやすく解説します。

「刺さない鍼って、どんな道具?」
そんな疑問をお持ちの方は、ぜひ次回もご覧ください。

◎ 刺さない鍼について相談できます

当院では、刺さない鍼から治療を始めることも可能です。
体質やご希望、既往歴などを丁寧に伺いながら、施術方法を一緒に考えていきます。

鍼に不安を感じている方も、どうぞ安心してご相談ください。

せりえ鍼灸室では、医学的な情報と鍼灸のエビデンスを共有しながら、妊娠期だけでなく、乳幼児期から更年期やシルバー世代を含む女性のライフステージ全体を見据えた鍼灸ケアを行っています。症状だけでなく、その方の生活背景やこれまでの経過を大切にしながら、医療と連携した無理のない健康支援を心がけています。

© 2025 Yoshihiko Koido. 本記事の内容の無断転載・引用を禁じます。

院長 小井土善彦

全日本鍼灸学会認定鍼灸師。京都市生まれ。 ●略歴 旧早稲田鍼灸専門学校卒業 明治国際医療大学大学院鍼灸学専攻博士課程前期(修士)終了(鍼灸学修士) 筑波技術大学客員研究員(2014年~2017年) 全日本鍼灸学会認定委員会審査委員(2014年~2022年) 全日本鍼灸学会経絡経穴委員会委員(2022年~) 現代医療鍼灸臨床研究会会員(評議員) ●教育 神奈川県立衛生看護専門学校 助産師学科 非常勤講師 (2008年~) 森ノ宮医療大学保健医療学部 鍼灸学科 非常勤講師(2009年~2016年) 東京有明医療大学保健医療学部 鍼灸学科 非常勤講師(2016年~) アルファ医療福祉専門学校非常勤講師(2023年~) ●所属学会 全日本鍼灸学会、日本母性衛生学会、日本東洋医学会、日本脳神経外傷学会 ●主な研究テーマ 産婦人科領域における鍼灸治療の研究 軽度外傷性脳損傷および軽度外傷性脳損傷に対する鍼灸治療に関する研究 ●趣味、特技 スキー、音楽鑑賞、読書、写真、旅行、ドライブ、釣り、シュノーケリング、キャンプ、ハイキング、料理、ショッピング、昼寝・・・

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