―いつ、どんなときに鍼灸が役立つのか
妊娠中はホルモンの変化や子宮の増大など、身体が大きく変化する時期。不快な症状が現れやすく、日常生活に負担を感じる方も少なくありません。この記事では、特に相談の多い「冷え・むくみ・頻尿」がなぜ起こるのかを、東洋医学の視点も交えて解説し、鍼灸がどのように役立つのかをご紹介します。
妊娠中は、ホルモン動態の変化や胎児の発育による子宮の増大など、妊娠に伴う生理的な変化により、身体が大きく変化することで、つわり・腰痛・むくみ・睡眠の質の低下など、さまざまなマイナートラブルが起こりやすくなります。
逆子治療の臨床報告では、胎位改善と同時に妊婦特有の不定愁訴(腰痛・睡眠・むくみなど)が改善したという副次的な効果も示されており、鍼灸が妊娠期の不快症状の緩和に役立つ可能性が示唆されています。また、薬を使いにくい妊娠期において、自然治癒力を高める鍼灸は有効な非薬物療法として期待されています。

東洋医学からみる「妊娠中のからだ」
―原気(生命エネルギー)の消耗と変化
東洋医学では、妊娠中は母体の「原気(生命エネルギー)」が胎児へと分け与えられるため、お母さんの身体を支える力が一時的に弱まると考えます。
その結果、冷え・むくみ・腰痛・疲れなど、さまざまな症状が現れやすくなるのです。
特に原気を統括する「腎」は冷えに弱く、妊娠で消費される腎気が冷えによってさらに低下すると、その影響がむくみとして身体に現れることがあります。腎は水の調整役でもあり、病的なむくみ(尿蛋白や心疾患などの徴候)ではない場合、東洋医学では“腎気の不足による水分代謝の低下”と捉え、腎気を補うケアを行います。
むくみだけじゃない ― 頻尿も“腎気の低下”と関係?
妊娠中は子宮が大きくなることで膀胱が圧迫され、頻尿が起こりやすくなります。
しかし、東洋医学ではこれに加え、
妊娠により腎気が低下 → 水の調整機能が低下 → 夜間の尿の回数が増える
という仕組みで説明します。
実際、冷えを改善し腎気の働きが整うことで、むくみや頻尿が軽減するケースは臨床でも多く経験されます。
鍼灸ができること ― 症状へのケア+原気を整えるケア
鍼灸治療では、妊娠経過が順調で重大な疾患が疑われないことを確認した上で、
- 出ている症状への直接的なケア(冷え・むくみ・腰痛・不眠など)
- 妊娠で消耗した原気(腎気)を補い、全身の働きを整えるケア
の両面からアプローチします。
臨床では、逆子治療を行いながら「腰痛が軽くなった」「眠りやすくなった」というお声をいただくことも多くあります。
鍼による痛みや内出血が起こることはありますが、頻度は少なく、重篤な有害事象の報告はほとんどありません。
薬が使いにくい妊娠期において、安全性が高く副作用が少ない非薬物療法として、西洋医学とは異なる視点で妊娠中の女性を診る鍼灸が果たせる役割は大きいと考えられています。
まとめ
- 妊娠中の冷え・むくみ・頻尿は、ホルモン変化や子宮の増大だけでなく、東洋医学的には“原気”や“腎気”の不足が関係
- 冷えの改善は、むくみ・頻尿などの緩和につながることが多い
- 鍼灸は症状ケアとともに全身の働きを整え、妊婦さんのQOL向上に役立つ
- 非薬物療法として安全性が高く、妊娠期に適した選択肢
妊娠期の「つらい」を少しでも軽くしたい方は、ぜひご相談ください。
次回第4回のテーマは、 「つわりを軽くしたい。鍼灸は役に立つ?— エビデンスと臨床経験から —」です。妊娠中の女性の半数以上が経験するといわれている‟つわり”について、西洋医学の対処法と東洋医学の対処法をご紹介し、せりえ鍼灸室が大切にしているぞれぞれの特徴を活かして併用し、つらい症状を我慢しないで乗り切るケア法をわかりやすく、解説します。ご期待ください。
せりえ鍼灸室は、東洋医学の知恵と繊細な技術で、妊娠中をはじめ、その他のステージの女性のからだや妊活もサポートしています。
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