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【シリーズ第7回】 逆子(骨盤位)について正しく知る

— 鍼灸はいつ始める? 週数と安全性 —

増えています。無痛分娩で産みたい方からのご相談

逆子は「めずらしい状態」ではありません

逆子(骨盤位)は、妊娠中期には妊婦さんのおよそ30%にみられる状態です。
妊娠週数が進むにつれて自然に頭位へ戻ることが多く、分娩時には3〜5%程度まで減少するといわれています。
そのため、妊娠28週の検診で逆子と診断されても、自然に治るから心配しなくて大丈夫、といわれることが一般的です。

一方で、出産が近づいても逆子のままの場合、現在の日本では原則として選択的帝王切開を行う施設がほとんどです。
自然分娩を選択した方にとっても、無痛分娩を選択した方にとっても、逆子と診断されてからの時間は、実は不安や迷いを抱え過ごすことになります。

西洋医学で行われている逆子への対応

現在、骨盤位に対して知られている主な対応は次の方法です。

  • 外回転術
     一定の有効性は報告されていますが、胎盤早期剥離や胎児心拍異常などのリスクがあるため、慎重な適応と十分な管理が必要とされています。
  • 逆子体操(膝胸位)
     長く行われてきた方法ですが、明確な有効性を示すエビデンスは乏しく、腹部の張りを強める可能性があることから、近年は積極的に推奨されない傾向にあります。

鍼灸の有効性は?

逆子の鍼灸治療といっても、施術するのはお腹ではなく、主に足にあるツボです。
海外では、小指の爪の際にある「至陰(しいん)」へのお灸が用いられており、2023年に更新されたコクランレビューでも、その有効性が示されています。 日本ではこれに加えて、内くるぶしの少し上にある「三陰交(さんいんこう)」への鍼を併用する方法が一般的です。
医師の協力のもとで行われた副院長の臨床研究も、これらの解析対象に含まれています。

鍼灸は「いつから」始めるのがよいのか

私たちは、骨盤位に対する鍼灸治療について、長年にわたり臨床と研究の両面から検討を重ねてきました。
その一環として、骨盤位で鍼灸治療を受けた1,235例を対象に、「どの妊娠週数で治療を開始するのが適切か」を分娩歴別に分析しました。

その結果、

  • 全体の矯正率は 62.3%
  • 妊娠週数が進むほど、矯正率は低下する傾向
  • 初産婦:妊娠30週以降に診断された場合は、なるべく早く開始
  • 経産婦:妊娠33週以前までの開始

が、鍼灸を利用する際の一つの目安になる可能性が示されました。

この結果は、妊娠28週以降の骨盤位妊婦に対し,「遅くとも妊娠32週までに鍼灸治療を開始すること」「なるべく時間をおかずに鍼灸治療を開始すること」が頭位へ変換する可能性を高める、とした東原氏ら(2016)の報告と同様でした。
※いずれの報告も症例集積研究であり、エビデンスには限界がある点については、慎重に考慮する必要があります。

安全性について、私たちが大切にしていること

これまでの国内外の研究では、逆子に対する鍼灸治療によって重篤な有害事象が起きたという報告はほとんどありません

当院では、

  • 妊娠経過が順調であることの確認
  • 医療機関との情報共有・連携
  • 刺激量を抑えた鍼とお灸の使用

を基本とし、安全性を最優先に治療を行っています。

鍼灸は「選択肢のひとつ」

逆子は、必ずしも「治さなければならない状態」ではありません。
それでも、自然分娩や無痛分娩を希望しながら悩んで過ごしている妊婦さんにとって、重篤な有害事象が少ない鍼灸が、選択肢の一つになり得ることを知っていただけたらと思います。

参考文献

院長と副院長が、それぞれ寄稿しています。

〇「イラストと写真で学ぶ 逆子の鍼灸治療 第2版 形井秀一編著」医歯薬出版 東京 2017

〇Coyle ME.Smith C.Peat B. Cephalic version by moxibustion for breech presentation. Cochrane Database Syst Rev. 2023 May 9;5(5):CD003928. doi: 10.1002/14651858.CD003928.pub4.

〇辻内敬子,小井土善彦.骨盤位に対する鍼灸の受療週数の検討―初産婦と経産婦の治療開始過数の考察―.現代鍼灸学 2021; 21(1):25-31

〇東原亜希子,堀内成子.灸治療を受けた骨盤位の転帰と胎動の変化.日本助産学会誌.2016;31(1): 20-130

ひとりで悩まず、まずはご相談ください

逆子と診断されると、「このまま様子を見ていていいのかな」「何かできることはあるのかな」と、不安や迷いを感じる方も少なくありません。

鍼灸は、必ず受けなければならない治療ではありません。

だからこそ私たちは、正しい医学情報とこれまでの研究・臨床経験をもとに、今の週数や状況でできることと、できないことを丁寧にお伝えすることを大切にしています。

「今の時期に相談してもいいの?」

「病院と並行して受けられる?」

そんな疑問でも構いません。

せりえ鍼灸室では、医療機関と連携しながら、妊婦さん一人ひとりの気持ちに寄り添ったサポートを行っています。

どうぞ、お気軽にご相談ください。

次回第8回のテーマは、自宅でもできるお灸セルフケア 妊婦さん向け「安全に使う3つのポイント」です。ご期待ください。

せりえ鍼灸室では、医学的な情報と鍼灸のエビデンスを共有しながら、妊婦さん一人ひとりの気持ちと状況に寄り添い、医療と連携したサポートを大切にしています。

© 2025 Yoshihiko Koido. 本記事の内容の無断転載・引用を禁じます。

院長 小井土善彦

全日本鍼灸学会認定鍼灸師。京都市生まれ。 ●略歴 旧早稲田鍼灸専門学校卒業 明治国際医療大学大学院鍼灸学専攻博士課程前期(修士)終了(鍼灸学修士) 筑波技術大学客員研究員(2014年~2017年) 全日本鍼灸学会認定委員会審査委員(2014年~) 現代医療鍼灸臨床研究会会員(評議員) ●教育 神奈川県立衛生看護専門学校 助産師学科 非常勤講師 (2008年~) 森ノ宮医療大学保健医療学部 鍼灸学科 非常勤講師(2009年~2016年) 東京有明医療大学保健医療学部 鍼灸学科 非常勤講師(2016年~) ●所属学会 全日本鍼灸学会、日本母性衛生学会、日本東洋医学会、日本脳神経外傷学会 ●主な研究テーマ 産婦人科領域における鍼灸治療の研究 軽度外傷性脳損傷および軽度外傷性脳損傷に対する鍼灸治療に関する研究 ●趣味、特技 スキー、音楽鑑賞、読書、写真、旅行、ドライブ、釣り、シュノーケリング、キャンプ、ハイキング、料理、ショッピング、昼寝・・・

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