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【シリーズ第10回】 産後の回復のために

出産後すぐからできる鍼灸ケア・セルフケア

産後の養生が、なぜこれほど大切なのか

妊娠・出産に伴う急激な生理的変化や身体的変化は、心身にさまざまな影響を及ぼします。
腰痛などのマイナートラブルや、分娩に伴う痛みが産後も続くと、産後のQOL(生活の質)が低下し、育児に支障をきたすこともあります。🔶Youtube動画はこちら

しかし多くのお母さんは、

  • 出産直後から育児に追われる
  • 自分の不調を「仕方ない」と我慢してしまう
  • サポートが十分に得られない

といった状況に置かれています。
高齢出産の増加や核家族化もあり、産後こそケアが必要なのに、ケアが届きにくい時代になっています。

西洋医学から見た「産後ケア」の重要性

出産後、女性の身体は

  • ホルモンバランスの急激な変化
  • 出血や筋骨格系への負担
  • 授乳や睡眠不足による疲労

など、回復を必要とする状態にあります。

こうした背景から、政府は2021年より、
医学的・心理的サポートを提供する「産後ケア事業」をスタートさせました。
近年問題となっている産後うつ、自殺、虐待の予防という観点からも、産後ケアの重要性は高まっています。

「妊娠中の腰痛」は産後まで続く可能性がある

スウェーデンで行われた12年間の追跡調査では、
妊娠中に腰や骨盤の痛みを訴えた女性は、そうでない女性に比べて、

  • 腰や骨盤の痛みを感じる日数が多い
  • 腰や骨盤の痛みで年間15日以上仕事を休む割合が高い

ことが報告されています(Bergström et al. 2017)。

これは、妊娠中の腰痛を「よくあること」として済ませるのではなく、
その後の人生のQOLまで見据えて捉え直す必要があることを示しています。

産後すぐからできる「鍼灸ケア」の役割

そのような状況の中で、非薬物療法である鍼灸治療が果たせる役割は大きいと考えています。

私たちは、産科病院において、

  • 妊娠後期に腰痛を訴え
  • 分娩時に大きなトラブルのなかった女性

を対象に、
骨盤ベルトのみの群
骨盤ベルト+鍼治療を併用した群
を比較するランダム化試験を行いました。

その結果、産後の入院期間中に鍼治療を加えた群では、
腰痛の程度に中等度の改善効果が認められ、
産後の痛みのコントロールにおいて安全かつ有用である可能性が示されました。

左図は出産2 日後から4 日後,右図は出産2 日後から出産1 か月後のVAS 値の変化量を群毎に示している。両図とも変化量に有意差はみられないが,左図では鍼治療併用群の変化量が大きく,‘中’の効果量(d)を示し,臨床的な有意性を示している。辻内敬子, 坂口俊二, 小井土善彦, 廣野敏明, 谷口武. 産後の腰痛に対する骨盤ベルト装着と鍼治療併用との比較試験. 母性衛生2023;64 (2) :357-366.

東洋医学から見た「産後の回復」

東洋医学では、出産は
「原気(元気のもと)」を大きく消耗する出来事
と考えます。

東洋医学では、妊娠中は栄養だけでなく、お母さんが蓄えていた原気を子どもに授けていると考えて、養生の重要性を訴えています。(東洋医学ではじめる出産準備教室第2版 辻内敬子著 医歯薬出版2017年より引用)

産後は、

  • 無理をしない
  • 温める
  • 休む
  • 少しずつ回復を促す
  • 周囲の人に助けてもらうのも養生のうち

という「養生」が何より大切な時期です。

鍼灸は、

  • 血流を促す
  • 自律神経を整える
  • 回復力そのものを引き出す

ことを目的としたケアであり、
産後女性の回復を支える選択肢の一つになり得ます。

せりえ鍼灸室が大切にしていること

せりえ鍼灸室では、

  • 出産後すぐの身体の状態
  • 育児環境やサポート体制
  • お母さん自身の気持ち

を丁寧に伺いながら、
無理なく続けられる産後ケアを一緒に考えています。

「産後だから仕方ない」と我慢せず、
つらくなる前に、どうぞご相談ください。

自分で頑張ろうとしがちな、お母さん自身の気持ちは尊重しつつ、周りの人の手を借りてみよう!に、気持ちを少し変えるだけでも肩の力が抜けて楽になりますよ。

この記事の内容について、動画でもわかりやすく解説しています。

初めて鍼灸を受けるか迷っている方にもおすすめです。

文章では伝えきれないポイントもお話ししていますので、ぜひこちらもご覧ください。

🔶YouTube動画はこちら

次回第11回のテーマは、「“信頼できる鍼灸院”を見分けるポイント

妊婦さんが失敗しないために知っておきたいこと」です。ご期待ください。

せりえ鍼灸室では、医学的な情報と鍼灸のエビデンスを共有しながら、妊婦さん一人ひとりの気持ちと状況に寄り添い、医療と連携したサポートを大切にしています。

© 2025 Yoshihiko Koido. 本記事の内容の無断転載・引用を禁じます。

院長 小井土善彦

全日本鍼灸学会認定鍼灸師。鍼灸学修士。 筑波技術大学客員研究員(2014年~2017年) 全日本鍼灸学会認定委員会審査委員(2014年~2022年) 全日本鍼灸学会経絡経穴委員会委員(2022年~) 現代医療鍼灸臨床研究会会員(評議員) ●教育 神奈川県立衛生看護専門学校 助産師学科 非常勤講師 (2008年~) 森ノ宮医療大学保健医療学部 鍼灸学科 非常勤講師(2009年~2016年) 東京有明医療大学保健医療学部 鍼灸学科 非常勤講師(2016年~) アルファ医療福祉専門学校非常勤講師(2023年~) ●所属学会 全日本鍼灸学会、日本母性衛生学会、日本東洋医学会、日本脳神経外傷学会 ●主な研究テーマ 産婦人科領域における鍼灸治療の研究 軽度外傷性脳損傷および軽度外傷性脳損傷に対する鍼灸治療に関する研究 ●趣味、特技 スキー、音楽鑑賞、読書、写真、旅行、ドライブ、釣り、シュノーケリング、キャンプ、ハイキング、料理、ショッピング、昼寝・・・

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